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管理費と修繕積立金

管理費等

マンション標準管理規約では、区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるために、管理費と修繕積立金(管理費等)を管理組合に納入するとしています。

 

 

管理費等の負担割合

区分所有法第19条では、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分(専有部分の面積の割合)に応じて、共用部分の負担に任じ」るとなっており、マンション標準管理規約でも同様の規定を置いています。
規約で別の定めが可能ですが、衡平制を欠く設定は問題となる場合があります。
例えば「住戸の面積に関わらず同額とする。」

 

 

管理費

管理費は、管理組合を運営していく上で、年間を通じて経常的に支払い、消費していくものです。そして、管理規約でその支払の使途を規定していることが一般的です。

 

 

管理費の使途

マンション標準管理規約第27条では下記のような経費に充てるとしています。

 

 

①管理員人件費

管理員を雇って管理業務を行わせる場合に、管理員に支払う費用です。
受付等の業務、点検業務、立会業務、報告連絡業務、管理補助業務など

②公租公課

③共用設備の保守維持費および運転費

照明設備、防火設備、エレベーター設備等の保守維持費や設備の使用に伴う電気代など

④備品費、通信費その他の事務費

掲示板や事務用の机・椅子等の備品を購入する費用、電話代、切手代等の通信連絡費用、消耗品費など

⑤共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料

⑥経常的な補修費

経常的な補修費としては、簡単なペンキの塗り替え、集会室の窓ガラスの取替え費用など

⑦清掃費、消毒費及びごみ処理費

業者に委託して共用トイレの消毒を行う場合の費用、焼却炉によるごみの処理に要する費用など

⑧委託業務費

管理業務の全部又は一部を管理業者に委託する場合に支払うべき費用

全部を一括委託する場合には、一、三、七号は、通常、委託業務費に含まれる場合が多いと思われます。

⑨専門的知識を有する者の活用に要する費用

マンション管理士、弁護士、司法書士、建築士、公認会計士等の国家資格者やマンションリフォームマネージャー等の民間資格取得者など

⑩地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用

管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用当居住者間のコミュニティ形成や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費等の地域コミュニティにも配慮した管理組合活動費。

※各居住者が各自の判断で自治会、町内会等に加入する場合の自治会費、町内会費は別のものです。

⑪管理組合の運営に要する費用

会議費、広報及び連絡業務に要する費用、役員活動費など

⑫その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用

 

 

修繕積立金

購入したマンションについて、安全・安心で、快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するためには、適時・適切な修繕工事を行うことが必要ですが、マンションの共用部分の修繕工事は、12年、15年、30年といった長い周期で管理組合が実施する必要があります。修繕工事の実施時には、多額の費用を要します。

こうした多額の費用を修繕工事の実施時に一括で徴収することは、区分所有者にとって大きな負担となり、区分所有者間の合意形成が困難であるほか、場合によっては、資金不足のため必要な修繕工事が実施できないといった事態にもなりかねません。

こうした事態を避けるため、将来予想される修繕工事に要する費用を、長期間にわたり計画的に積み立てていくのが、「修繕積立金」です。

修繕積立金は、共用部分について管理組合が行う修繕工事の費用に充当するための積立金であり、専有部分について各区分所有者が行うリフォームの費用は含まれません。

一般に、マンションの分譲段階では、分譲事業者が、長期修繕計画と修繕積立金の額をマンション購入者に提示していますが、修繕積立金の当初月額が著しく低く設定される等の例が多く見られます。修繕積立金等に関して必ずしも十分な知識を有している方ばかりがマンションを購入するとは限りません。
修繕積立金の計画がどのようになっているのか確認することが大切です。

 

 

修繕積立金の積立方法

修繕積立金にはいくつかの積立方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあります。

 

 

均等積立方式

長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を、計画期間中均等に積み立てる方式

段階増額積立方式

当初の積立額を抑え段階的に積立額を値上げする方式

修繕積立基金

購入時にまとまった額を基金として徴収

 

  • ※ 一時金徴収・・・・・修繕時に一時金を徴収
  • ※ 借入れ・・・・・・・修繕時に金融機関から借入れ
  • ※ 修繕時に一時金を徴収する又は金融機関から借り入れたりすることを前提とした積立方式を採用している場合もあります。

 

段階増額積立方式や修繕時に一時金を徴収する方式など、将来の負担増を前提とする積立方式は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じる場合があります。

 

将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます。

新築マンションの場合は、段階増額積立方式を採用している場合がほとんどで、あわせて、分譲時に修繕積立基金を徴収している場合も多くなっています。このような方式は、購入者の当初の月額負担を軽減できるため、広く採用されていると言われています。

 

 

修繕積立金の使途

●特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。

①一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕(一般的に大規模修繕工事と言われています。)

外壁塗装工事、屋上防水工事、鉄部塗装工事、給・排水管工事など

②不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕

火災、自身、爆発等

③敷地及び共用部分等の変更

階段しかないところにエレベーターを設置するなど

④建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査

⑤その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

 

 

借入れ

積立金だけでは工事の費用をまかないきれない場合に、総会の決議により金融機関等から借入れをすることができます。この返済金に修繕積立金を充てることができます。

 

 

総会決議事項

修繕積立金の取崩しは、総会の決議が必要です。

 

 

区分経理

修繕積立金は、将来の大規模修繕工事等のための資金として計画的に積み立てられるものです。
日常の管理に要する費用として徴収されている管理費が不足するからと言って、修繕積立金から流用したりすると、大規模修繕の際に多額の不足金が出てしまうおそれがあります。
この様にならないためには、修繕積立金と管理費は区分して経理する必要があります。

 

 

次回は、「管理費等の滞納」です。

投稿者プロフィール

稲葉 早苗
稲葉 早苗株式会社マンション夢設計 代表取締役
プロナーズ理事(組織担当)
マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引主任者、行政書士。
平成16年4月 稲葉マンション管理士・行政書士事務所開設
現在、マンション管理組合との顧問業務のほか、大規模修繕工事からマンションの再生に係る総合アドバイザーとして活動中。
また、マンション管理セミナーを開催し、マンションに係わる情報を発信している。