管理費としてインターネット利用料金を利用の有無にかかわらず請求できるとした規約は有効か?
広島地裁平成24年11月14日
(1)事件の概要
マンション1棟全体(全住戸)に対するサービスとして、インターネット常時接続サービスを提供しているマンション。管理規約には、区分所有者は「管理費等」として管理費・使用料・インターネット利用料金・修繕積立金を支払わなければならないことが定められ、付則には、「本物件はインターネット対応の設備(インターネット専用回線、ネットワーク)を採用しており、利用の有無にかかわらず利用料金月額2835円が必要となり、その利用料金は管理費等に含まれること」等が定められていたが、区分所有者Yがこれを支払わなかったため、管理組合Xが支払請求訴訟を提起した。
Xは、インターネットサービスに関する事項は区分所有法30条1項の「建物の管理に関する区分所有者相互間の事項」にあたるから規約で定めることができると主張したが、Yはインターネットサービスを利用していないから、支払い義務を負わないと主張して争った。
(2)問題点
①XはYに対して、管理規約に基づきインターネット利用料金の支払いを求めることができるか。
(3)裁判所の判断
Xの請求を認め、インターネット利用料金の支払いを命じた。
①について
インターネットに係る物理的なLAN配線機器等のインターネット設備そのものは、本件マンションの共用部分であるから、その保守・管理に要する費用は、本件マンションの資産価値の維持ないし保全に資するものであり、その費用は各区分所有者が一律に負担すべきものである。
これに対し本件マンションの各戸に対してインターネットサービスを提供するために締結されたインターネット接続回線契約やプロバイダー契約に基づき発生する費用は、インターネットを実際に利用していない者にとって負担すべき根拠がないようにも思える。しかし、そのようなサービスが本件マンションの全戸に一律に提供されているということは、本件マンションの資産価値を増す方向で反映されるから、これらに要する費用についても、本件マンションの資産価値の維持ないし増大に資するものといえ、インターネットサービスの利用の有無に係らずその費用支出による利益を受けている。
また、インターネット利用料金についてインターネットサービスの利用の有無を考慮して戸別に利用料金を定めることになれば、新たな人的、物的コストが発生し、そのコストを誰にどのように負担させるべきか等の問題等が発生することを回避するという意味では、インターネット料金を一律に徴収する旨を定めることは一定の合理性がある。
加えて、インターネット利用料金は月額2835円であって、これにはインターネット接続回線契約に要する費用だけでなく本件マンションのインターネット設備の保守、管理に要する費用も含まれていることからすれば、インターネットサービスを利用していない区分所有者にとってみても、不相当に高額であるとはいえない。
これらの事情を総合すれば、インターネットサービスの利用の有無を考慮することなく一律にインターネット利用料金の支払いを負担すべき旨規定している管理規約及び附則の定めは、区分所有法30条3項の趣旨に照らしてみても、区分所有者間の利害の衡平が図られていない故に無効であるとまではいえない。
当該債務は特定承継人にも及ぶものです。
投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
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