お世話になっている管理組合の滞納問題で、昨年59条競売裁判を申し立てて1審2審(控訴審)ともに敗訴した事例は、本ブログで既にお知らせしたとおりですが、59条競売に関しては、過去十数回実施してすべて勝訴していましたので私としては初めての経験でした。

請求が認められなかった結果を受けて、春先から理事会や弁護士さんとも打合せの上、敗訴した原因となった「無剰余取消の根拠」について立証するため、実際に過去の債務名義(和解調書)に基づいて強制競売を実施しました。

所定の手続き(強制競売申立書と予納金の納付)を経て、競売開始決定となりましたが、執行官の現地調査後に裁判所から無剰余である旨の通知があり、その後取り消しが決定となりました。
予想通りとはいえ、私たち管理組合にとってはとても悲しい気持ちになりました。

1審と2審を通じて私たちが言いたかったことは

  • わざわざこんなことをしないでも無剰余取消になることは最初からわかっている。(不動産登記事項証明書に記載された住宅ローンの金額と弁済年数から容易に判断できる。)
  • 無駄な競売をするために数十万円の費用がかかる。(取消しになったら、それまで掛かった費用は戻ってこない。)
  • 時間がかかればかかるほど、滞納金額は増大し、マンションの資産価値は下がり、滞納問題はいつまでも解決しない。

等です。

民法の三大原則の一つに「所有権絶対の原則」があり、個人の所有権は何人も侵すことができないということでしょうが、第1審を担当した裁判官はこの原則を厳格に適用したのではないかと思います。
私たちのように、マンション管理組合の運営に携わっている者からすると、管理費等の長期滞納が管理組合運営に与える影響の大きさが分かっていますので、もっと柔軟に対応して欲しいと思います。

とはいっても、法治国家ですので裁判所の決定に従って行動するしかありません。今回は、私たちからしたらやっても無駄と分かっている強制競売を実施し、対象のマンションは先行する抵当権のため無剰余であることを実際に証明しました。
そのうえで、改めて59条競売のための裁判を申し立てたましたが、訴状の中で、無剰余で取消となったことも証明したので、今回は裁判自体は割りとすんなりと進みました。
同じ裁判所でしたが担当部署は違い、今回は口頭弁論も5分で終結し、2週間後には管理組合の請求通りの判決をいただきました。

勝訴判決を受けて再度競売の申立てを行い、競売開始決定が出ましたが、今回は無剰余取消はありませんので後は粛々と手続きを進めるだけとなりました。
最初に総会で59条裁判の申立決議をしてから実に1年半になりますがようやく解決の光が見えてきました。

投稿者プロフィール

重松 秀士
重松 秀士重松マンション管理士事務所 所長
プロナーズ理事(開発担当・監査人兼務)
マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引主任者、ファイナンシャルプランナー、再開発プランナー、二級建築士、二級建築施工管理技士、建築設備検査資格者、甲種防火管理者、甲種危険物取扱者。
大手タイヤメーカー勤務を経て、平成15年2月マンション管理士として独立。財団法人マンション管理センターで嘱託社員として「マンションみらいネット」の立ち上げや「標準管理規約」第22条に対応する「開口部細則」の制定に従事。現在は約40件の管理組合と顧問契約を結びながら継続的な管理組合運営のサポートを行いつつ、大規模修繕工事や給排水管更新工事、管理コストの削減、管理費等の滞納、管理規約の改正等の個別コンサルティングを実施している。