9月6日午前3時8分ごろ発生した北海道胆振地方中東部を震源地とする地震は、厚真町で最大深度7を観測した。マグニチュードは6.7と推定される。話を聞けた管理会社や管理組合団体役員らによれば、マンションの建物被害は少なかったが、停電に伴う断水、エレベーター停止などの被害が報告された。
今回の地震で、道内全域約295万戸が停電した。停電で給水ポンプが稼働しなくなったため、断水も発生した。
公益社団法人北海道マンション管理組合連合会(道管連)常務理事の町田信一さんが住む札幌市中央区は震度4。管理組合理事長を務める自宅マンション(110戸・7~9階建7棟、特約30年)に被害やけが人はなく、家具の転倒などもなかったという。だが、地震発生後間もなく停電。エレベーターも停止し、断水した。
町田さんはマンションの向かいにある公園の水道水で水を補充した。他の住民も町田さんに倣い、ペットボトルなどに水を汲んでそれぞれ部屋に運んだという。75歳以上の高齢者も8人居住しているが、自力で運んだ。
停電は6日午後11時ごろに解消。エレベーターも業者の点検などを経て、翌7日の朝には動いたそうだ。
管理組合は約10年前から、役員や各棟から2人ずつ選出される班長らで構成する防災組織を設置しており、災害発生時には防災組織のメンバーが管理棟に集まる決まりだった。
だが集まったのは町田さんと副理事長2人の計3人だけだった。
避難訓練は定期的に実施し、災害対策マニュアルも作成していた。
だが、「いざ、地震が来ると何も機能しなかった」。
町田さんは「東日本(大震災)のときも揺れたし、本州の地震かと思ったのかも」とみる。実際、町田さんも情報を得るまでは道内に震源があるとは思っていなかったという。「恐らく、みんな自分が無事だったし、真っ暗だったし、北海道の地震じゃないだろうと(いうことで集まらなかった)。一元的な情報共有の方法も含め、今後大きな災害起が起こったらどう対応するか考え直す必要がある」と反省を口にする。
◇
道内に管理物件を持つ管理会社に被害状況などを聞いた。
札幌市内を中心に235棟を管理する管理会社では、同市内14棟で外壁のひび割れやタイルの浮きといった建物被害があった。詳細は今後調査する方針。けが人はほとんどいなかったという。同市では液状化もみられたが、この管理会社では傾きなどの被害はなかったそうだ。
停電でシャッターが開閉しなくなり店舗内に人が閉じ込められたマンションがあったという。エレベーター停止による閉じ込めの被害は「まだ把握しきれていないが、多くはないのでは」とみる。
多くの物件がポンプで水をくみ上げて給水しているというが、断水の詳しい状況について、10日時点では「何も報告が入ってきていない」としている。
札幌市に本社を構え、約700棟を管理する管理会社は「全物件に対し被害の詳細を確認している」最中。
北海道は地震発生前日、台風21号が通過しているため、「台風なのか地震による被害なのかも含め、具体的な状況を把握するにはもう少し時間がかかる」と話している。地震発生当日、徒歩や自転車などで通勤できる管理員は、担当マンションで対応に当たったという。
以上マンション管理新聞第1082号より。
震度5強を記録した札幌市清田地区では液状化による戸建て家屋の甚大な被害があったが、上記のようにマンションの傾き等の被害状況の全詳細はまだ入ってきていない模様。
地下水位の高い同地区や埋め立て地や砂質地盤(河口周辺等)では、震動によって地盤が液状化します。液状化すると地盤から泥水や砂が噴き出し、地耐力がなくなるため、直接基礎の建物は沈下し、傾きます。
また、液状化が起こると、マンホール、埋設タンク、地下駐車場などの比重の軽い地中構造物は浮き上がってきます。護岸や堤防は、沈下するだけでなく水平方向にも移動し、地中に埋設されたライフライン、とくに下水道や雨水排水系が損傷します。
地盤の液状化で人命が失われることは少ないのですが、不動産価値が滅失したり、建物機能が損傷という意味では甚大な被害となります。
液状化のおそれのある地盤は地耐力が弱いので、中層以上のマンションでは直接基礎(いわゆるべた基礎)ではなく杭基礎が採用されるのが普通です。
もっとも、最近のマンションでは杭は液状化にも対応できるように設計されていますが、築年数の古い高経年マンションでは杭が折れることもあり、建物が傾くこともあり得ます。
投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
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