台風15号の影響で停電・断水が続いた千葉県。受水槽方式が採用され、停電に伴う断水に見舞われたマンション住民は「トイレを流す水を確保するのが一番大変だった」と話す。ただ、マンション全体で完全に断水することはなかった。受水槽を介さず、配管から直接取水する共用水栓が敷地内に複数設けられていたからだ。
 千葉県市原市の団地型マンション(築約20年)。住民で管理組合役員経験者の辻根健司さんによれば、台風15号の影響で9月9日の午前4時ごろから翌10日の午後2時ごろまで停電があった。
 停電中は住戸内で断水が発生。数棟ある高層棟ではエレベーターが停止した。マンションの給水方式は受水槽方式。高架水槽は設けず、地下の受水槽から加圧ポンプで配水する仕組みだ。このため停電で水をくみ上げるポンプが稼働しなくなり、断水した。
 断水中は、トイレを流す水の確保に苦労したという。受水槽に水が残っていれば、その分は直接取水できるが受水槽が空になれば、電気が復旧しない限り完全に断水する。
 だが、団地内には公共水道管と敷地内の受水槽をつなぐ間の配管から分岐させて設けたごみ置き場用の共用水栓や散水栓があった。
 水栓は受水槽を介していないため、停電時も自由に水が使えた。
 水栓は敷地内に4カ所あり、管理事務所棟の共用水栓も使用できたという。
 「水の心配をする必要がなかったので、水栓があったのはよかった」と辻野さん。
 ただ、それでも取水した水を住戸まで運ぶのは一苦労だったようだ。
 辻野さんの部屋は5階。約34時間続いた停電期間中、トイレ用に容量8リットルほどのバケツで4回は水を運んだというが「5階だときつい。お年寄りには厳しいでしょう」。
 今回最も驚いたのは「台風が原因で断水したこと」だった。
 「地震のことしか頭にないから。台風で停電・断水というのはまさに想定外」と話す。
 台風による、建物被害もあった。
 ベランダに設置された隔壁板や屋根瓦が破損。瓦や樹木の枝が折れて落下し、自動車を傷つける、といった具合だ。
 管理スタッフによれば、「業者に連絡がつかない」状況で、被害箇所の処置も行えずにいる。

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 受水槽方式が採用されているマンションも水槽を通さずに設置された水栓が敷地内にある場合は、水道事業者による給水が行われていれば停電時も水が使える。
 辻根さんのマンション所在地で水道事業を運営するのは千葉県営水道。
 県営水道では台風15号による集合住宅等における停電に伴う断水について、受水槽方式や増圧直結方式で停電している場合でも「受水槽やポンプを通さずに接続されている水栓がある場合は給水が可能」だと、ホームページ上で情報提供を行っている。
 受水槽を通さずに水栓を付けることができるかどうかは、各地の水道事業体によって判断が分かれる。
 東京都水道局の場合は、既存マンションでも、こうした共用水栓を新たに設置できる。親メーターの手前で分岐させるため、新たなメーター設置が必要になるが、申請すれば工事は可能だ。
 これまで水栓設置を禁止してきた大阪市水道局も、昨年の台風21号で停電に伴う断水被害が発生した点を考慮し、9月から「非常用」に限り水栓の設置を認めるようになった(次ページ参照)。←下記添付参照

投稿者プロフィール

福井 英樹
福井 英樹福井英樹マンション管理総合事務所 代表
マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者