新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言が4月16日、全国に拡大されるなどの措置を受け、マンション管理の現場にも、さらなる混乱が広がっている。マンション管理適正化法で規定された業務の遵守が困難になる会社も出てきそうだ。

「うちは、今月は月次報告を諦めます。報告書を提出できる状況にないので」

東京の本社を置く中堅管理会社の中間管理職は、そうこぼす。

理由はスタッフ不足。在宅勤務(テレワーク)ではこなすことができない報告書類のチェック・プリントアウト等の作業に必要な人員が確保できないようだ。ただ、マンション管理適正化法施行規則87条5項で毎月交付が義務づけられている書面(5項書面)だけは提出する。

「月次報告」とは適正化法で交付が義務づけられた収支報告に加え、管理費等の滞納状況や各種設備点検結果等の業務報告書を作成し、理事会に説明を行う作業だ。報告書の内容は各社で異なるが、委託契約で明文化されているケースが多い。

月次報告ができなくても直ちに法律違反には問われないが「5項書面」を交付できない場合は違反になる。書面の交付は法律上、電子メールでの交付も認められているが、この場合は管理者の承諾が必要になる。

新型コロナウイルス感染拡大防止策としてテレワークが推奨されている現状で、こうした人員不足等に起因する「違反」があった場合、どうなるのか。

国土交通省関東地方整備局は5項書面の未交付について「しなくてよい、というわけにはいかない」と話す。

ただ、会社都合でどうしても5項書面が交付できない場合「例えば事の次第を明確に記載し顛末書を提出する、あるいは覚書を結ぶ、とか方法はある」。「そうした点も含めて管理組合と話し合いをして、トラブルがないようつとめていただきたい」と話した。交付の遅れについては、少なくとも管理組合の理解、承諾を得る作業が必要というわけだ。

適正化法で実施が義務づけられているが現在の状況下で不備が生じるケースについて一般社団法人マンション管理業協会は4月23日付の会員向け文書で「合理的な理由が確認された際には監督処分の対象とはしないよう申し入れている」と報告している。

現場作業にも支障が生じつつある。

マンションなどの清掃作業を請け負う会社の社長は200人強の作業員のうち、1割弱が感染を恐れたり公共交通機関の利用を避ける目的で仕事を休んでいる、と話す。8割以上は生活のため、また管理組合ら顧客の要望に応えようと協力的に勤務しているが、1%は退職したという。

この社長は「作業員も感染リスクを抱えながら仕事をしている。仮に作業員から感染者が出ても、われわれに責任が押しつけられることになりかねない。しわ寄せは全て業者に来る」と危機感をあらわにする。

ごみ出しなどの業務を続けるよう求める管理組合については「お客さま目線で考えれば十分理解できる」とした上で、「お客さま、管理業者、下請け業者が同じ方向を向いていないといけない」と話した。

以上、マンション管理新聞第1136号より。

 

投稿者プロフィール

福井 英樹
福井 英樹福井英樹マンション管理総合事務所 代表
マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者