一般社団法人マンション管理業協会(管理協)は12月2日、IT技術を活用して管理組合の総会を行う場合の法的・実務的論点と考え方を示したガイドラインを1日付で策定した、と発表した。実際に人が集まる「リアル」に加え、オンラインによる出席を認める「リアル+オンライン併用型」ではオンライン出席者の出席・議決権行使の取り扱い、本人確認、質問の取り扱いなどを論点に挙げている。
ガイドラインは管理協が9月に設置した「ITを活用した総会の在り方検討会」(座長=鎌野邦樹・早稲田大学法学学術院法科大学院教授)が2回にわたる会合を経て、作成した。
同検討会は1日付で報告書をまとめ、管理協理事長名で国土交通省住宅局長・法務省民事局長に提出している。
報告書ではコロナ禍で政府から「新しい生活様式」が示されたが「管理組合運営においても大きな変革が求められている」と指摘。
今冬の「第三波」到来に対し、「三密」を回避・緩和して総会などを開催できる方法を構築する必要があり「場所の制約を受けず、どこにいても参加可能な『新しい総会のスタイル』が望まれている」と述べ「その実現に向けITの利活用は必要不可欠」だとしている。
その一方で、総会をどう開催するかは管理組合の規模、IT環境の整備状況や区分所有者のIT環境の有無、あるいはITへの理解度などの起因する格差を踏まえ「望ましい手法が検討されるべき」だとし、「必ずしも『ITを活用した総会』が望ましいという方向性を提示するものではない」と言及。
検討会が策定したガイドラインは、あくまで管理組合が総会の在り方を検討する際の「追加的な選択」を提供するのが目的だ、としている。
報告書では「リアル+オンライン併用型」に加え、実際に人が集まらず、ウエブ会議システムなどを使って出席・議決権行使を行う「オンライン」総会・理事会について基本的な考えを示す一方、法的論点を提示。論点についての考え方を別途「ガイドライン」に示した(表①に論点。5面(下記)にガイドラインの概要)。
IT総会が現行の区分所有法上開催できるかどうかについては「否定されるものではないと考える」と結論づけている。
リアルタイムに開催する場所と各区分所有者との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている環境であれば総会の意義を満たし、建設的な議論の機会として「有用な手段」だと位置づけた。
IT理事会については「リアル+オンライン併用型」「オンライン」いずれも「管理規約への規定が必要だと考えられる」とし、「標準管理規約への反映が必要」との認識を示している。
規定については、オンライン理事会の開催方法、リアルに加えオンライン出席・議決権行使を認める旨の条文を挙げている。
また今後は、コロナ禍という緊急措置ではなく、ITの利活用拡大に鑑み、IT総会の適正実施に向け区分所有法やマンション標準管理規約などにおける法解釈の明確化が必要だとした。
具体的には「オンライン形式で開催する際の招集手続き(通知事項)」、「オンライン形式で理事会を開催する際の規約モデル」等を挙げた(表②参照)。
法的・実務的論点
リアル+オンライン併用型総会
今後の課題
リアル+オンライン併用型総会
①オンライン出席区分所有者の出席ならびに議決権行使の取り扱いについて
②オンライン出席者(区分所有者・代理人)の本人確認について
③オンライン出席区分所有者からの質問の取り扱いについて
④通信障害等への対応について
オンライン総会
①開催場所の考え方について
②開催手法の選択について
今後の課題
①オンライン総会・リアル+オンライン併用型総会
以下の点について区分所有法・標準管理規約等における法解釈の明確化
ⅰ オンライン出席区分所有者の議決権行使の取り扱いについて
ⅱ オンライン出席の管理者等による、毎年1回の「事務報告」の取り扱いについて
ⅲ オンライン形式で開催する際の招集手続き(通知事項等)について
②オンライン理事会・リアル+オンライン併用型理事会
以下の点について標準管理規約等に明示
ⅰ オンライン形式で理事会を開催する際の規約モデル
ⅱ オンライン出席者の議決権行使の取り扱いについて
ⅲ オンライン形式で開催する際の招集手続き(通知事項等)について
以下、5面関係記事より。
管理協策定『ITを活用した総会の実施ガイドライン』
オンライン総会 IT弱者への配慮 不可欠
一般社団法人マンション管理業協会が策定した『ITを活用した総会の実施ガイドラインーITを活用した「新しいマンション様式」ー』。「リアル+オンライン併用型」総会では4点、「オンライン」総会では2点の法的・実務的論点を提示し、各論点における考え方を示している。ここでは一部をピックアップしてみた。
A リアル+オンライン併用型総会
①オンライン出席区分所有者の出席者の出席・議決権行使の取り扱い
リアル総会の開催場所と各区分所有者との間で情報伝達の双方向性・即時性が確保されているといえる環境下なら各区分所有者がウエブ会議システムなどを使って総会に参加し、議決権を行使することは可能だとした。
この場合の議決権行使は区分所有法上の「電磁的方法による議決権行使」ではなく当該区分所有者が実際の総会に出席し、その場で議決権行使をしたとの扱いも「可能である」とした。
②オンライン出席者(区分所有者・代理人)の本人確認
基本的には通常の総会と同様の扱いを取ることが相当だとした。
③オンライン出席区分所有者からの質問の取り扱い
テキストでの受け付けも可能となるが、その場合内容のコピー&ペーストができる点から「議事運営を妨害するといった不当な目的で同じ質問を複数回送るなど質問権の行使が乱用的に行われる可能性がある」。
対策として「画面を通じて挙手」「ウエブ会議システムの挙手機能等を使って質問の意思を示した」区分所有者を、質問者として議長が指名するといった例を挙げた。
④通信障害への対応
招集者側に起因する障害が発生しオンライン出席者が審議・決議に参加できない場合は「決議の効力に影響が生じる可能性は否定できない」とし、「あらかじめ対策が必要」だとした。
障害で多くのオンライン出席者が参加不可能となった場合は「改めて総会を開催することも考えられる」が、どう対応するかを検討する事前協議の必要性を指摘した。
Bオンライン総会
①開催場所の考え方
区分所有法35条1項では開催場所について明示を求めていない。このためオンライン総会では「通知事項として開催方法を明示することが考えられる。」とした。
占有者が利害関係を有する場合は意見陳述機会が損なわれないよう留意する。アクセス可能なサイトのURLなどを建物の見やすい場所に提示し、占有者から申し出があった場合ID・パスワードを案内する、といった案も示した。
一人でも「リアル会場」出席希望なら「併用型採用を」
②開催手法の選択
議案の内容、管理組合の規模、IT環境の発展段階、「IT格差」を含む区分所有者の構成などの状況を踏まえて協議し、望ましい手法を採用する。
「リアル」会場への出席の機会を失わないよう配慮が必要だとし「パソコンを所有していない、また操作ができない」「リアル会場への出席を希望する」区分所有者が一人でもいる場合は「リアル+オンライン併用型」を採用する必要がある、と注意を促した。
IT格差を是正し、全区分所有者の権利を確保しておくことも考えあられるが「パソコンの設置」、「機器の操作についての助力」など、格差是正に必要な労力・費用等に留意し、事前協議が望ましいとしている。
以上、マンション管理新聞第1156号より。
The post 「IT総会」でガイドライン 議決権行使・本人確認等、論点・考え方を提示 具体的取り扱いも 管理協 first appeared on 福井英樹マンション管理士総合事務所.
投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
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