国土交通省の「マンション管理の新制度の施行に関する検討会」(斎藤広子座長)の第4回会合が1月29日、ウエブ会議で開かれ、マンション標準管理規約(単棟型)の改正案が提示された。ITを活用した総会・理事会開催や緊急事態宣言発令時等における共用部分の使用制限に関する条文・コメントを整備したほか「置き配」にも言及するなど、新型コロナウイルス感染症対策を意識した内容だ。同省マンション政策室によれば、改正時期は「未定だが、パブリックコメントを経て2021年度中」を想定している。
今回の改正箇所を上表(略)に示した。規約条文4カ所、コメント9カ所の計13カ所で新設や追記などがされている。
改正マンション管理適正化法で策定が義務付けられた「基本方針」や管理計画認定制度の認定基準等について議論する目的で設置された検討会だが、コロナ禍における対応などを踏まえ。急きょ標準管理規約の改正が検討されることになった。この日は「単棟型」の改正案が提示され、意見交換を行った。
改正案はコロナ禍、またデジタル化への対応としてITを活用した総会・理事会に関する条文やコメントが半分以上を占めた。
新型コロナウイルス感染拡大の対応として総会の延期や共用施設の使用、住戸玄関前などに荷物を置く「置き配」も盛り込んだ。
デジタル化や新型コロナ以外では、専有部分の配管を共用部分の配管と一体的に改修する際、工事費に修繕積立金を拠出する際の取り扱いに言及。マンション管理適正化法・建て替え円滑化法の改正を踏まえ、総会決議事項に管理計画認定や要除却認定を加えている。
ITを活用した総会・理事会では、総会の会議および議事(第47条)で、1項条文の「総会の会議」に「ウエブ会議システム等を用いた会議を含む」と追記し開催が可能である旨を明確化した。
定足数の考え方として、コメントで議決権行使が可能な組合員は出席に含まれる一方、単なる傍聴人の組合員は出席には含まれない旨を新設している。
理事会の会議および議事(第53条)も47条1項と同様の文言を1項条文に追記。コメントの定足数の考え方も同様だが、ウエブ会議システム等を利用できない理事への配慮等の留意点も記載している。
コロナ対策 「総会招集時期延期」に異論 標準管理規約改正案を議論 「法で明確化すべき事項」
理事長の業務報告(第38条3項)のコメントでは、オンラインで総会を開催する際、理事長がウエブ会議システム等で出席し報告することも可能だとした。ただ組合員の質疑への応答に適切な対応が必要と留意点を示している。理事会への報告(4項)も同様だ。
総会・理事会の招集手続き(第43条・52条)では1項コメントに、招集通知で示す会議の「場所」についてURL、ID・パスワードが考えられるとした。
総会の議決権(第46条)の取り扱いでは、オンラインを併用する場合については「総会が開催される物理的な場所に行って議決権を行使する場合と同様の取り扱い」とコメントした。通信手段の不具合等が発生した場合に決議無効の恐れがある、といった課題も指摘した。
新型コロナ感染拡大の対応では、総会(第42条)の招集時期について「災害または感染症の感染拡大等によりやむを得ない場合」には延期も可能だとした。この場合、状況解消後に遅滞なく招集すれば足りる旨をコメントに記載した。
使用細則(第18条)では、緊急事態宣言等発令時に共用施設の使用停止・制限を行うことや、いわゆる「置き配」を認めるルールを細則で定めることが考えられる旨をコメントに記載している。
敷地および共用部分等の管理(第21条)では、専有部分の配管取り替え等の費用について「区分所有者が負担すべきもの」とした上で各自が単独で行うより費用が軽減される場合には、共用・専有一体的に工事を行うことも考えられる、と言及。
こうしたケースでは、あらかじめ長期修繕計画に専有部配管取り替えについて記載し、また工事費用を修繕積立金から拠出する旨を規約に定めることが必要だとした。既に工事を行った区分所有者への「補償」の有無などについても「十分留意」が必要だとした。
議決事項(第48条)では、条文に管理計画認定と要除却認定の申請を追加した。同室は過半数決議による「普通決議と考えている」と説明した。
◇
この日の議論ではITを活用した総会・理事会開催について、篠原みち子委員や小林利之委員からウエブ会議システムについての説明がないと分かりにくいとの指摘があった。
鎌野邦樹委員は標準管理規約改正後の問題に言及し、ウエブ会議をしないことを規定した規約が有効かどうかや規約を改正せずにウエブ会議を開催できるかどうかを「詰めておいた方がいい」とした。
戎正晴委員はウエブ総会が「区分所有法を改正せずにできるかどうかという根本の問題もないことはない」と指摘。
同室は「現行区分所有法に少なくとも抵触するものではないというところから改正を考えている」と述べた。
篠原委員は、単なる傍聴人と議決権行使を予定している組合員を最初に「仕分け」できるのか質問した。
同室は「例えば書面で議決権行使をした上で、時間があればウエブ会議で総会の傍聴を考えている組合員か、あらかじめ議決権行使をする予定がない者として仕分けが上がってくると考えている」と述べた。
戎委員は、議決権行使の仕方について、事前に議決権行使書や委任状を出さずにウエブ総会に参加し「画面の向こうで手を挙げることを議決権行使として認めるかどうか。全員の合意がなければ電磁的方法の議決権行使でも難しい」と指摘した。
同室は「改めて精査したい」と述べた。
瀬下義浩委員は、43条1項の総会の招集通知で示す会議の「場所」について、同項のコメントにあるURL、ID・パスワードを「本文に入れないと『場所』だけだと想定できないのではないか」と指摘した。
ウエブ会議については管理協の報告書に挙げられている情報伝達の「双方向性と即時性を備えたという条件付けは付した方がいい」と述べた。
42条の感染拡大等で通常総会の招集時期の延期を可能とする条文について、鎌野委員は「区分所有法で明確化すべき事項ではないか」と指摘。年1回の招集を義務付けている同法で明確化されていないにもかかわらず「本文に堂々とただし書きを入れるのはクエスチョン」と述べた。
同様の考えを示した戎委員は、招集の延期のほか「会日の延期もあり得ないことはなく」、また通常総会に加え「臨時総会も一緒の合わせて規定する問題もないことはない気がする」と述べた。
18条コメントの置き配を認める際のルールについては、瀬下委員が「イレギュラーとして制定するのはいいが、宅配ボックスがあって置き配ルールを決められると宅配ボックスを使ってくれないケースも懸念される」とし、「宅配ボックスがない場合においては」など限定的にする考えを述べた。
篠原委員もルールを厳格にしておく必要があるとし「生活様式が変わってきているからそれに対応することも管理組合の一つの役割だと思う」と述べた。生鮮食品や時間など「いろんなことを細かく決めれば、それでいいんじゃないかという気がする」とした。
戎委員は「やむを得ず認める場合でないと本来専用使用権的なものが観念できないような共用部分等に置き配のための個人が使えるスペースができてしまうような気がする」と述べた。
配管の一体的改修については、秋山哲一委員が「非常に合理的」と評価。川上湛永委員も「一歩前進」と述べた。
オブザーバーの一般社団法人マンション計画修繕施工協会(MKS)の中野谷昌司常務理事は、工事の先行実施者の補償について「管理組合の工事と同等以上の工事が行われたものに限るとか、そういうことも必要」と述べた。
コメントに「補償の有無について」となっている点から、篠原委員は「ないこともあるだろうし、ある程度補償することもある。そこは管理組合の考え方」と述べた。
同室によれば、検討会での改正案の議論は「今のところ今回だけ」の予定で、省内で改正内容を検討する。
第5回会合は3月17日の予定。
以上、マンション管理新聞第1161(令和3年2月5日)号より。
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投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
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