管理組合の理事長を理事会役員の多数決で解任できるかどうかが争われた訴訟の上告審で最高裁第一小法定(大谷直人裁判長)は12月18日、解任を認めなかった2016年10月4日の福岡高裁判決を破棄し、審理を福岡高裁に差し戻すよう命じる判決を言い渡した。大谷裁判長は「理事を組合員のうちから総会で選任し」、「互選により理事長を選任する」などと定められた管理規約がある場合、「理事の過半数の一致により理事長職を解くことができると解するのが相当」だとする判断を示した。規約条文が「マンション標準管理規約」に準拠しているケースでは、理事長職は理事会役員の多数決で解任できる、とする解釈が初めて示された。
判決は裁判官5人の全員一致。
大谷裁判長は、区分所有法3条・25条1項の定めから、まず「区分所有法は、集会の決議以外の方法による管理者の解任を認めるか否かおよびその方法について区分所有者の意思に基づく自治的規範である規約に委ねている」と言及。
その上で「理事長は区分所有法上の管理者とする」「役員である理事には理事長も含まれる」「役人の選任・解任を総会決議で決める」「理事は組合員から総会で選任し、その互選で理事長を選任する」と定められた管理規約に着目。条文の趣旨を「理事長を理事が就く役職の一つと位置付けた上、理事に対し、原則として互選により理事長の職に就く者を定めることを委ねる者」と解釈した。
このため、理事の互選で役職を決める規定がある場合は、「理事の互選により選任された理事長について理事の過半数の一致により理事長の職を解き、別の理事を理事長に定めることも総会で選任された理事に委ねる趣旨」と考えられるのが、「規約を定めた区分所有者の合理的意思に合致するというべき」と結論付けた。
理事長の解任を巡るトラブルが起きたのは福岡県久留米市のマンション。13年1月の設立総会で役員に、2ヶ月後の理事会で理事長に選任されたが、その半年後の理事会で管理会社の変更を議題とする臨時総会の開催を主張、独断で総会の招集を通知したため、その後の理事会で職を解かれた元理事長が原告。
解任決議にはこの元理事長を除く役人14人のうち、10人が賛成した。
翌年の総会では役員も解任されたため、元理事長は一連の理事会・総会決議の無効確認を求めて提訴。16年3月の福岡地裁小倉支部判決は元理事長の主張を認め、元理事長を解任した理事会決議を無効だと判断。このため、その後の理事長が招集した総会は結果的に「権限がない者」が招集した総会だとされ、また手続きに瑕疵があったなどとして元理事長の解任を確認した総会なども無効だと結論付けた。10月の福岡高裁判決も地裁判決を追認した。
高裁判決では「いったん選任された役員を理事会決議で解任することは予定されていない」と判断していた。
この日の最高裁判所判決は、原審が認定した総会・理事会の無効判断について法令違反を認め、理事会手続きの瑕疵の有無などについて審理を福岡高裁に差し戻した。
以上、マンション管理新聞第1059号より抜粋。
今回の最高裁判断によると、従来からの判断、すなわち、「コンメンタールマンション標準管理規約」評論社や「コンメンタール区分所有法」評論社(理事会で理事長職の解職は可能。ただし、理事の解任は出来ない。)という従来の通りの解釈ということになります。
投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
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