国土交通省は10月16日、油圧緩衝器などを生産するKYB・子会社のカヤバシステムマシナリーが製造した免震・制震オイルダンパーについて、大臣認定などに適合しない製品が設営されていると報告があった、と発表した。不適合製品は共同住宅など全国987件に出荷されており、分譲マンションも含まれるとみられる。同省は「震度6強~7程度の地震で倒壊するおそれはない」としているが。KYBは不適合製品と疑いのある製品を、全て交換する方針を明らかにしている。
免震用オイルダンパーは建物と地上をつなぐ支承材を補助する減衰材で、揺れを抑えると同時に地下階などに設けられた免震層の変形を防ぐ効果がある。減衰性能は大臣認定品では基準値から前後15%、顧客との契約では前後10%の差が認められており、この「許容値」から外れた場合、許容値内に入るまで製品を分解・調整する。
ただ同社は調整などを行わず、許容値を超えた値を許容値内に収まるよう検査記録を書き換えて出荷。制震用オイルダンパーは大臣認定建築部材ではないが、顧客との契約における減衰性能の許容値は基準値から前後10%と決められており、これも許容値を外れた値を書き換えていた。
今回不正のあったオイルダンパーが設置された987件中、住宅を含む52件には、塗料やピストンといった製品部材にも認定不適合材を用いた製品が設置されていた。さらにこの987件とは別に、113件で認定仕様と異なるパッキンを用いたオイルダンパーが設置されているという。同社によれば、出荷先は主に住宅。
◇
同省によると987件中、265件が住宅。また東京都では16日現在、調査中も含め都内59件の住宅に不適合オイルダンパーが使われているとしている。国も都も分譲マンションの数は把握していないという。
同社が19日公表した不適合製品出荷先70件には、民間建物と見られる物件はない。同社は「所有者の了解を得た物件から公表」するとしており、分譲マンションの公表は難しいと見られる。
川金コアテックも オイルダンパーデーター改ざん 全国で93件
国土交通省は10月23日、光陽精機(本社茨城)が製造した一部の免震・制震オイルダンパーについて、顧客との契約における減衰性能基準値に適合しない製品があった、と発表した。検査データーを契約内容に適合する値になるように書き換えていたという。同省によれば、大臣認定不適合製品はない。
KYBらによる同オイルダンパー検査データ改ざんを受け、光陽精機が社内調査を行ったところ不正が発覚。不適合製品が設置されている物件は全国93件あるとみられる。同省発表資料によると、免震用は住宅に出荷されていないが、制震用は10件出荷されている。
以上マンション管理新聞第1086号より。
制震工法や免震工法によって揺れを半分程度にすれば耐震性が増し、建物が危険になる震度を1程度上げることができるといわれています。しかしながら、各種工法によって、長所と短所があり、対応できる限界がどの程度かは工法によって異なり、加速度を減らすことはできても、変位や速度が増加することがあります。
揺れの速度を抑えることができても振幅が大きいと、小さな震度でもエレベーターは止まります。加速度が大きいと、室内の家具や人の揺られ方が増加し、30~40cm/secを超えると危険です。建物の揺れを減らす工法を採用している建物は、家具の移動・転倒は少なくなり、住戸内の住人の安全性を高めますが、工法によっては必ずしも家具等の移動・転倒が少なくなるとは限りません。そもそも、免震・制震工法の建物であることだけで安心することはできないようです。
上記の記事で、国土交通省が震度6強~7程度の地震で倒壊するおそれはないとしていますが、耐震強度を引出す構造計算プログラムが100種類以上もあり、計算方法自体も何種類もあり、数値が変化するようで、実際の話、震度6強~7程度の揺れで倒れるかどうかは地震が起きてみなければわからないようです。
あのヒューザーの耐震偽装事件が発覚した2005年に千葉県北西部を震源とする地震が発生した際に、東京都の足立区で震度5強を観測したが、付近のヒューザー物件に特段の被害はなかったといわれています。さらに、JRで1200本の電車が運休し、エレベーターの閉じ込め事件が78件も出ており、それでも当時、数ヶ月後に「使用禁止命令」が出された当該偽装マンションは普通に何事もなかったように平然と建っていたそうです。
とはいいながらも、偽装が発覚し、表面化した以上は、行政や建設業界は手をこまぬいてはおられず、当時のマスコミも大騒ぎをしていたことが記憶に新しいですね。
投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
最新の投稿
- 認定者ブログ2024.11.14計15項目を提示 外部管理者方式導入で「移行安全度」リスト 日管連
- 認定者ブログ2024.10.31積立金値上げ 「『色』に合った提案を」長寿命化テーマに「二つの老い」で対策 10/12 東京都セミナー
- 認定者ブログ2024.10.22「管理不全」適正化事例紹介も 10/4第17回合同研修会 横浜市のモデル事業に選定 日管連
- 認定者ブログ2024.09.18建替組合の設立を認可 堺市