住宅あんしん保証(本社東京)が販売する大規模修繕工事瑕疵保険の申し込み棟数が今年2月末時点で累計5200棟に達した。2010年8月の販売開始以来、実績は上昇し続けている。同社の渋谷貴博・不動産事業部部長代行は「セミナーへの参加やインターネットでの情報発信で周囲の理解が深まった。今は発注者側が瑕疵保険加入をリクエストする流れができている。」と話す。

今年1月、東京都内の団地(築36年、15棟298戸)の一室で、天井と壁に染みができる漏水事故が発生した。3年前に給・排水管の更新工事を行っていた。

詳細は調査中、被害住戸の上階専有部配管の接続不良が疑われるが、管理組合とのトラブルは起きていない。

工事会社が「万が一のときは瑕疵保険」と保険期間を10年間とする同社の「給排水管路工事に係る保険期間延長特約」に加入していたことが幸いした。

渋谷氏は「工事会社の速やかな事故対応でスムーズに進捗している」と語る。

 

給・排水管路工事 延長特約「10年」を推奨

 

工事会社が請求する保険金は500万円ほど。補修費のほか、調査費用、被害のあった天井や壁の補修費、仮住まいとなった場合はその費用も支払い対象となる。

今回のケースでは工事会社は10年特約の支払い限度額3億円の保険金コースに加入しているため、仮に保険金が支払われたとして、残る7年間で瑕疵が認定されても2億7600万円の支払いを受けることが出来る。

渋谷氏は基本補償の5年間はもちろん、10年特約の「安心感」を強調する。

発注者が工事会社に瑕疵保険の加入を求めることが増えてきたが5年か10年か条件が不確かなままにすると「最終的に申し込みをするのは工事会社のため多少保険料が安い5年を選んでしまうこともある」(渋谷氏)。

5年間の違いは大きいが「保険料に大きな差はないため、きっちり10年のリクエストをしてほしい」。

また規模の大きい工事では万が一の際「損害額が高額になる」ため、渋谷氏は瑕疵保険加入を推奨する。

渋谷氏は、今後のマンション火災保険料の上昇を踏まえて、瑕疵保険に加入するメリットも指摘する。

一般社団法人日本マンション管理士会連合会の「マンション管理適正化診断サービス」では、瑕疵保険に加入していると高評価が得られ、同サービスで高い評価を得ると、日新火災海上保険の「マンションドクター火災保険」の保険料が割安になる。

同社の大規模修繕工事瑕疵保険の申し込みのうち、給・排水管路工事は全体の4割を占めるが、そのうち8割が築30年以上での工事だ。

渋谷氏は「高経年の団地型は火災保険が上がっていくリスクが高い」とし、工事があったとき瑕疵保険に入っていれば「管理組合が負担する火災保険料の低廉化と工事の万全姓の二つのメリット」が得られるとする。

19年度の大規模修繕工事瑕疵保険申し込み棟数は、2月末時点で826棟となった。今年度中に、過去最古の900棟に達する可能性もある。

申込数は管理組合や管理会社、設計事務所などで9割を占め、工事会社の自主的な加入は1割にとどまる。

渋谷氏は、保険料は「工事費の0.3~0.5%程度で、わずかな負担で安心が提供できる」と工事会社の自主的な加入も訴えている。

以上、マンション管理新聞第1133号より。

国土交通大臣指定の住宅瑕疵担保責任保険法人は下記の5社に集約されています。

 

・(株)住宅あんしん保障

・住宅保証機構(株)

・(株)日本住宅保証機構

・(株)ハウスジーメン

・ハウスプラス住宅保証(株)

投稿者プロフィール

福井 英樹
福井 英樹福井英樹マンション管理総合事務所 代表
マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者