室屋弁護士は、熊本市東区の旧「サンアメニティ小楠公園」の敷地売却事業の過程で起きた問題やその解決などについて報告した。
学会が大会資料用に作成した『マンション学』によれば「小楠」は地震時築20年。66戸で敷地面積は2980平方メートル。地震でくいが損傷し建物が沈下するなどの被害に遭った。罹災証明は全壊。
管理組合は震災から約9カ月後に復旧決議をしたが、その後の調査で基礎くいが大破していることが判明し補修を断念。2020年11月の臨時総会で建物解体と敷地売却を決議した。事業主体として一般社団法人の設立なども決めた。
21年6月に同法人と買受人が敷地の売買契約を締結。建物はその約半年後に解体。熊本市が創設した基礎等を除く解体費用の9割を補助する制度を利用した。敷地の売却代金の分配金は22年5月に各共有者に送金された。
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問題は最初に業者が「復旧できる」と話を振ってきたところ。全く経験のないような会社に何で管理会社が依頼を立てたのか経緯が全く分らない。
地震が起き3年後くらいに私が入ったが、そのときには復旧決議に反対した10人が決議に賛成した当時の理事7人に買い取り請求をしていて訴訟になっている人もいた。
結局、裁判上と裁判外の和解で終わったが金額は大体100万円前後で一番高い人で300万円だった。
買い取り請求をされた当時の理事から、さらに住民に対し買い取り請求もしていた。ただ買い取り請求をしたときに書類を内容証明・配達証明郵便でしていなかったので誰に送ったのか分らない。
買い取り請求は法律上売買が成立するので一方的に解約することに同意してもらう解除の内容証明・配達証明郵便を全世帯に送り、それぞれ同意書をもらった。それで最初の状況に戻した。
事業完了は今年2月「初動が本当に大事」
復旧がだめだと気づいたときには公費解体の期限が過ぎていた。管理費と修繕積立金は1500万円ほどで解体費が6000万円くらいと聞いていた。
熊本市に周りに住宅街がある中で「この建物を残していいのか」「市民の生命・身体を守るのが自治体の役目だ」という話を何回もして9割補助の制度ができることになった。
解体費は結局5960万円くらいで、補助金は建物解体が完了した後に交付されるので熊本銀行に補助金の決定書を持っていき3500万円を借りた。利息は少なめにしてもらったが、手放しでは喜べなかったというのがある。補助金のスケジュール管理も大変かなと思う。
住宅ローンが残っている方もいて解体するときには抵当権者の同意も得ないといけない。この建物の時価の評価が非常に難しくて、バラつきはあったが大体125万円前後で評価してもらい、それを本人で負担するか、いったん組合で立て替え後に返してもらう方法にした。
そういった支払いに充てるため、まずは修繕積立金や管理費を事業のために使えるように規約を変更した。ただ立て替え後に亡くなられて結局回収できない状況になった人もいて事業費で負担することを皆さんにご了承いただいた。
アメリカ在住の人もおられて解体の同意書で必要な印鑑登録証明書がなかった。認印で可となり親族が電話で本人の声か確認するのと大使館で証明書をもらって本人確認した。
海外在住の場合、公的な証明や訴訟になったときの管轄はどうなるのかなと思う。
地震後に行方不明の人もいたが不在者財産管理人の選任の申し立て後に見つかり同意をとった。亡くなられて相続人の相続放棄もあった。
行方不明者が出ないように日ごろから連絡先を確保しておかないといけないと思う。
あとは1階の住民の補償問題もあった。当初は一時的に1階に穴を開け排水管を通していた。業者から、半年たったら取り外して通常の生活に戻れるということで1階の人は転居していたが、6カ月たってもそのまま。その経済的負担を補償する形で合意を取った。
今年2月に残余財産の分配が全部終わった。足掛け9年。最初がおかしいとこんなに長くかかるというのもあって初動が本当に大事だと思う。9割補助の制度ができてよかったが全国的にできるものではないと思う。
土地は1億円で売れた。基礎の解体費や諸経費などを差し引いて最終的な分配は120万円前後という形で終わった。
以上、マンション管理新聞第1268号より
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投稿者プロフィール
- マンション管理士(国家資格)・宅地建物取引士(国家資格)・区分所有管理士(マンション管理業協会認定資格で、管理業務主任者の上位資格)・マンション維持修繕技術者(マンション管理業協会認定資格)・管理業務主任者(国家資格)資格者で、奈良県初、大阪府堺市初かつ唯一のプロナーズ認定者
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