コミュニティー条項不可欠 10・19日管理協・全管連・マンション学会・日管連シンポジウム共同提言 福井英樹区分所有管理士・マンション管理士
(一社)日本マンション管理士会連合会大阪府会の判例研究会でも標準管理規約第27条十に以下の具体の付則をつけたことを以前の当該ニュース欄でお知らせいたしました。「管理組合は、当該マンション内自治会並びに周辺地域自治会への参加は個人参加とし、管理費からは充当できないものとする。但し、管理組合として当該マンション内自治会並びに周辺自治会への参画が、居住者の社会生活のコミュニティー形成に寄与し、委託する業務の対価、監査方法に蓋然性が認められる場合は、この限りでない。」として、コミュニティー条項が不可欠であることを明記しています。
当該シンポジウムで鎌野邦樹日本マンション学会副会長は「私的自治の尊重として管理組合が自由に考えられるものの、押し付けるものでもない」と述べ一定の制約を伴う活動の意義を認めている。
わが判例研究会の提案規約は手前みそではありますが、同提言を先取りし、ほぼ的を得たものと思われます。
区分所有者の父親が横領、本人に連帯責任を追及 弁護士が事例報告 第16回全国マンション問題研究会 続編
第16回全国マンション問題研究会が9月28日・29日、北海道函館市の函館弁護士会会館で開かれた。当日は、弁護士12人が11事例を報告、検討を行った。うち、奈良のマンションで区分所有者の親族が管理組合のお金を横領した場合の連帯責任について前回のニュースでピックアップいたしました。その続編です。
各弁護士の考察を紹介いたします。
小倉知子弁護士 賃貸借する時に、賃借人に管理規約を守らせる制約みたいなものを出すことがあるが、Aについてはあったのか?
伏見康司弁護士 ないですね。
石川和弘弁護士 区分所有者に責任があるとは理解できないのが率直な所だ。規約上、住んでいる区分所有者の親族が理事長になれる。理事長の地位は、管理組合と理事長に就任した者の委任契約に基づく善管注意義務違反という話であって、それを丸ごと身元引き受けするみたいな発想はどこからくるのか。居住者として迷惑を掛ける行為について責任を負うのは分かるが、なぜ理事長としての職務執行について与えた損害を区分所有者が責任を負うのか。
伏見康司弁護士 宮崎地裁も規約で「管理共有物の管理に関して共同の利益に反する行為をしてはならない義務」がはっきり定められている。ただ判決は特にそれを意識して書いている風ではない。共用部分であっても守らせる義務があることがきめられているうえでの判断で、A自身の委任契約というところから連帯責任にいけるのかは不安がある。ただ区分所有者が知らない間に電気を盗んでいたような話なので故意・過失がないような事案で、履行補助者の理論を適用しているので素直に当てはめれば、適用されて良いのかなと考えている。
石川和弘弁護士 委任契約に基づいて理事長としての職務についての履行補助者だと認められるとすれば、理事長のほうが報告をお求められれば区分所有者の方に報告しなければならないとか、そういう関係がないと履行補助者というの言いづらい。
鎌野邦樹・早大法科大学院教授 手掛かりは規約17条をどう見るか。どうやらこの趣旨は、基本的には区分所有者が輪番制などで相互に理事等の負担をして管理を行うが、いろいろな都合で区分所有者が理事等を出来ない場合があるだろう、ということで特別に配偶者、区分所有者の1親等の内の者まで理事として認めようというもの。仮に、そういう立場に立つと、本来は区分所有者の責務だということ。そういった意味では規約17条・34条2項の規定などを用いて、管理組合の規範として特別に連帯責任を負うという定めを設けているんだという考え方に立てば、裁判官を説得できるかなという感じがする。他方、民法418条(過失相殺)で、裁判所が損害賠償の責任およびその額を定めるときの管理組合の過失はかなり大きいと思うので、そういう判断がなされると予想される。
<コメント>
Aは「履行補助者」に当たり、区分所有者Bは、Aの故意・過失による義務違反について損害賠償責任を負うという主張を追加しようと検討している。比較的参考になる判例として、昨年11月12日の宮崎地裁判決があった。
区分所有者と同居する賃借人Yが、区分所有法6条1項または規約の定めに違反して、共同棟の電気を自室に引き込んだ旨を主張して、管理組合がYに民法415条に基づく損害賠償を求めた事案で、区分所有者に故意・過失がなくて、専有部分でない箇所についての不法行為的な事案なので、ちょっと近いのではと考えている。
管理規約には、管理共有物の使用に関して共同の利益に反する行為をしてはならない、所有する住宅に居住する者に組合の目的に反する行為をさせてはならない旨の規定があった。
宮崎地裁は、履行補助者の理論を認め、「賃借人やその同居人も、同部分を使用収益する以上は、区分所有者の義務の履行を補助する関係にあると見ることができる」とした。
そして、「区分所有者は、その所有分を賃貸して収益を得ている以上、賃借人ないしその同居人が他の区分所有者(組合人)に対して、損害を被らせた場合に、自らに故意過失がない限りこれを賠償する責任を負わないと解するのは妥当ではない」と判断した。
宮崎地裁は、規約行為違反に基づく連帯責任は認めたが、区分所有法6条1項の共同行為違反については、履行補助者の理論を適用することはできないと判断している。
当該マンションの管理規約
第17条(管理費等の管理)
1項 区分所有者より支払われた管理費等は、管理者ならびにその指示する者が「善良な管理者の注意』をもってこの管理に当たる。
第6章 使用上の注意
第34条(同居家族・代理占有者の使用)
1項 区分所有者は、その同居家族およびその専有部分を貸与等により第三者に占有させる場合には代理占有者に、本規約およびこれに付属する使用細則などによる使用上の制約を遵守させる義務を負う。
2項 区分所有者は、その同居家族または代理占有者の行為について、管理者または他の区分所有者等から苦情の申し出がある場合には、区分所有者の責任において処理解決する。また、その同居家族または代理占有者が本規約および使用細則などの定めに違反して、他の区分所有者等に損害を与えた場合には、連帯して損害賠償の責任を負わなければならない。
管理組合規則
第17条(役員の選出)
1項 集会の決議により理事長を置く。また現に本マンションに居住する区分所有者、その配偶者、および区分所有者の1親等以内のうちから、集会で理事および監事を選任する。
第21条(役員の誠実職務執行義務)
役人は法令・管理規約および本規則などの付帯規則ならびに集会・理事会の議決を遵守し、管理組合および組合員全体のために誠実にその職務を執行する義務を行う。
マン管新聞第920号より。
区分所有者の父親が横領、本人に連帯責任を追及 第16回全国マンション問題研究会
不在区分所有者Bの父親Aが居住する奈良県内のマンションで、Aが2002年9月に管理組合の理事に就任。04年ごろ理事長の指示を受けて金銭の出納・保管・運用等を行うようになった。
Aは07年9月、理事長に就任。管理組合の印鑑・通帳は、Aが管理していた。帳簿は、Aが管理会社に毎月指示を送って書かれていた。11年度の会計決算で、監事が銀行の残高証明書の写しが改ざんされていることに気付いた。Aを除いた役員で銀行に確認に行った結果、預金残高が7000万円くらい少ないことが発覚。その後Aは横領したことを認めたが、お金を全部使ったようで支払い能力がない。そこで、区分所有者Bへの損害賠償請求を思い立った。
管理規約に、同居家族等が他の区分所有者等に損害を与えた場合、区分所有者に連帯責任を負わせる規定があったからだ。管理組合は今年4月、Aに管理規約17条1項に基づく債務不履行責任と横領の不法行為責任、Bには債務不履行責任、要は管理規約に基づく連帯責任で損害賠償を求めて提訴した。Aは請求原因の事実等を全部認めたため、弁論は分離され、Bと争っている。
Bは、管理規約は、団体の構成員でない第三者に義務を課す根拠を有しないなどとして、17条の善管注意義務は区分所有者以外の占有者には適用されないと主張している。規約34条については、使用上の制約を遵守させる義務を負うことを定めているので、使用上の制約に違反して第三者に損害を与えた場合に適用されるとした。代理占有者が総会決議や理事長の委託で「管理者」または「その指示するもの」として管理費等の支払いなどをすることは、区分所有者による使用の許諾と関係がないとして、この規定の連帯責任の範囲の枠を超えている、と反論している。
※当該事案を去る9月28日・29日の第16回全国マンション問題研究会で、弁護士と大学教授がコメントしました。続く。。。マン管新聞第920号より。
改正耐震改修促進法 2013年11月25日施行へ 国交省
国土交通省は10月4日、改正耐震改修促進法の施行日を2013年11月25日とする政令を発表。法5条の「地震に対する安全性が明らかでないものとして、政令で定める建築物」(耐震不明建築物)は旧耐震の「1981年5月31日以前に着工した建築物」としている。
分譲マンションに関係するのは自治体が指定する緊急輸送道路等沿道に立地している旧耐震のケースと、管理組合が四分の三ではなく、過半数で耐震改修を望むケース。
都道府県や市町村が改正法に基づき指定する緊急道路沿道に立地する物件は「通行障害建築物」とされ、「要安全確認計画記載建築物」に含まれるため耐震診断が義務付けられ、結果も公表される。大阪府等は指定道路をパブリックコメントで公表しているが、多くの自治体は検討段階だ。
立地にかかわらず、耐震改修の実施を過半数で決めたい管理組合は自治体に認定申請することができ、新耐震基準未満と認められると「要耐震改修認定建築物」として過半数決議で耐震改修を行うことができる。分譲マンションは耐震診断・改修の努力義務対象。マン管新聞第920号より。
理事会に配偶者が常態的に出席しても法的に問題ないですか?福井英樹区分所有管理士・マンション管理士
理事会に役員の配偶者が常態的に出席されているケースが多くの管理組合で見受けられますが、果たして認められるものでしょうのか?
民法第761条(日常家事債務の連帯責任)、同第110条(権限外の行為の表見代理)を類推適用、具体的には、当該条項の趣旨を類推適用(具体的な日常家事には属さないが、外見上は日常家事に見える事項について夫婦の一方が第三者と法律行為をしたときは相手方においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲に属すると信ずるにつき正当の理由があるときに限り、第110条の趣旨を類推適用すべきである(判例))して、認められるものと解することも可能ですが、理事の職務は、在任期間中に理事会で取り上げられるさまざまな議題や問題の内容を検討・判断し、管理組合としての方針・意思を決定し、当該包括的事項を処理できる人として、総会で組合員から信頼され、理事として選任されているわけですから、やはり、紛争予防措置として、規約を改正しておくに越したことはありません。
福井英樹が参画している(一社)日本マンション管理士会連合会大阪府会の判例研究会では、標準管理規約53条第2項に加筆修正しております。
裁判所の判断
総会決議である「管理規約」において、理事会に出席できない場合の代理出席の規定を定めていれば、有効である。
理事会への出席のみならず、理事会での議決権の行使の代理出席を許すことを定めたものと解することができる。
代理出席の各要件に基づいて認めるものであるから、この条項が管理組合の理事への信任関係を害するものということはできない。
↓53条第2項に具体の加筆修正
第53条 理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。
2 理事に事故があり、又はやむを得ない事情があるために理事会に出席できない場合は、その配偶者又は同居の一親等の親族に限り、代理出席することができる。
3 議事録については、第49条(第6項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第3項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に出席した理事」と読み替えるものとする。
外壁材、1割が落下の恐れ 国交省調査
国交省調査は9月27日、建築防災週間における既存建築物等各種調査結果を発表。2013年3月上旬、地方公共団体が建物所有者に報告を求める形で、吹き付けアスベスト対策、窓ガラス地震対策、外壁材落下防止対策、広告板落下防止対策状況を発表した。築後約10年以上の避難路沿道建築物等でタイル等の外壁材落下の恐れありとされたのは、調査報告された建物の9.9%に当たる1369棟。築後約10年以上、避難路沿道に立地し外壁に広告板が設置されている建物では、1703棟(同2.9%)が落下の恐れありとされた。同省では建物所有者に適切な対応を指導するよう地方公共団体に要請する方針。
マン管新聞第919号より。
どんな時にやりがいを感じる? 理事会に信頼されていると感じる時 (一社)マンション管理業協会
(一社)マンション管理業協会が10月1日に発表した『マンション管理業の実態調査 調査結果報告書』でフロントマンが業務上でのやりがいを感じるのは「理事会役員に信頼されていると感じる時が87.8%で最も多く、上司に実力を評価される社内評価を大幅に上回った。なお、一人当たり担当管理組合数は約3割が15組合以上という結果が発表されている。労働環境的にも10組合程度が妥当だとされる中で、福井英樹マンション管理士も管理会社のフロントマンの担当数は10組合以上となると、まともな管理業務は不可能と考えております。理想は一ケタ台。今後もフロントとして働き続けるために必要なことは「業務負担の軽減」が73.2%でトップ。フロントマンの労働条件の問題が浮上している。
マン管新聞第919号より。
居住用マンションを目指すなら例外を記さないことが重要。 福井英樹マンション管理士・区分所有管理士
最高裁H9.3.27判決研究事例
福井英樹マンション管理士・区分所有管理士が参画する(一社)日本マンション管理士会連合会大阪府会の「判例研究会」では標準管理規約12条の効力の限界を研究材料とし、紛争予防措置として当該12条に2項、3項を付しました。
裁判所の判断:管理規約において、居住以外の飲食店等の用途に供してはならない旨の定めしか存在しなかった場合、屋内駐車場として建築、分譲された専有部分が事務所に改装された後の転得者(特定承継人)に対しては、分譲時に他の用途に供してはいけない旨の合意が存したとしても、拘束力を及ぼすものとは解することができない。専有部分の使用方法等につき、特定承継人をも拘束し得る制約条項を設けるためには、規約又は集会決議によって明記しておくべき。
(専有部分の用途)
第12条 区分所有者は、専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 前項にかかわらず、住戸部分を小規模な事務所兼用住宅等の居住環境を阻害しない程度の用途に供するもので、苦情が生じないものであれば可とする。
3 専有部分の使用において、次に掲げる用途に供することは、いかなる状況においても許されない。消費者金融、手形割引等の金融業事務所、暴力団事務所、政治結社事務所、宗教団体の事務所又は施設、風俗営業、その他良好な居住環境を阻害する用途
半沢の出向辞令は、左遷ではありません。福井英樹の独り言。
出向させる、たかだか次長級レベルの人事辞令をわざわざ頭取室に呼びつけすることはありません。半沢を頭取室に迎え入れるときの頭取の温かい感謝の表情を読み取りましたか?それに頭取が「ぜひ君にはこの辞令を受け入れてもらいたい。」と丁重に申し入れています。
これは出向先で、従来から暗躍している不正を本社ではどうすることもできず、手を焼いている矢先、半沢なら、それを是正することができると頭取が考えたと推測できます。続編がますます楽しみになってきました。「倍返し」はまだまだ続きますよ!刑法にも抵触する不正をどうどうとしている悪人の方、5年以下若しくは10年以下の懲役刑が待っていますよ!期待してください!
総会で決議された大規模修繕工事の実施を理事会の裁量で一部を保留した正当性 福井マンション管理士・区分所有管理士
福井英樹マンション管理士が参画する(一社)日本マンション管理士会連合会大阪府会の「判例研究会」では東京高裁H24.3.28判決を教材判例とし、提案として、標準管理規約21条2項の一部加筆、3項を追加しております。
正規の手続きを経て、管理組合が大規模修繕工事を実施したが、特定の区分所有者(1階店舗)が規約違反等の妨害をしたため、この店舗前付近の共用部分のみ工事をしなかった。総会で決議された大規模修繕工事の実施を理事会の判断で保留した点の正当性。
→工事完了後、当該実施しなかった部分が極端にみすぼらしく取り残された状態となっており、当該工事妨害をした区分所有者が理事らの債務不履行、不法行為により特別な損害が発生していると損害賠償を求めて訴訟したもの。
裁判所の判断
総会決議事項をすべて執行しなければならないと解すると、共同の利益を守り共用部分の管理を行う理事会が、かえって規約や区分所有法に違反する行為や区分所有者共同の利益を害する行為に及ぶことになってしまう。以上から、理事会は執行が義務付けられたものではなく、執行する権限が与えられているというべきであり、実施に当たっては一定の裁量が認められているというべきである。
(敷地及び共用部分等の管理)
第21条 敷地及び共用部分の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれをこれを行うものとする。ただし、バルコニー等のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
2専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分あるいは管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。
3前2項の管理行為が区分所有者又は占有者に阻害された場合は、阻害した区分所有者又は占有者は責任と負担を負わなければならない。理事長は理事会決議を経て当該阻害部分を共同の利益の為の管理を行うことができる。当該阻害部分の管理等を管理組合が行う時は、その管理等のため必要となる費用等は阻害した区分所有者又は占有者に請求するものとする。
と標準管理規約に加筆、修正してみました。